矯正治療における抜歯の重要性
矯正治療を行う際、患者様のお口の状態によっては抜歯が必要になることがあります。特に、歯の大きさに対して顎の骨が小さく、歯を並べるためのスペースが不足している場合、抜歯を伴う治療が選択されることが多いです。抜歯をせずに歯の側面を削ったり、歯列全体を前後に移動させる方法もありますが、お顔のバランスが崩れたり、治療後の美しさに影響を与える可能性が高いため、抜歯を行うことをおすすめする場合もあります。
抜歯を行う際の
メリット・デメリット
メリット
美しい横顔を目指した治療計画が立てやすい
抜歯を伴う矯正治療は、美しい横顔のシルエットをつくりやすい点が大きなメリットです。横顔の美しさの基準となるEライン(鼻と顎を結んだライン)に対して、前歯が出ている場合やいわゆる「出っ歯」「受け口」、さらには「叢生(歯がデコボコに生えている状態)」など、抜歯によって前歯を適切に移動させることが可能です。これにより、口元を引っ込め、バランスのとれた自然な顔立ちを実現できます。
顎が小さい方(バードフェイスの改善)に効果的
口元が突出して鳥のくちばしのように見える「バードフェイス」は、顎が小さく歯が大きいことが原因で起こることが多いです。この場合、抜歯を行って矯正治療を進めることで、上顎を後退させ、これまで目立たなかった下顎のラインを自然に引き出すことが可能です。こうした治療によって、顔全体のバランスが改善されるだけでなく、より美しい横顔を手に入れることが期待できます。
デメリット
身体への負担
抜歯には身体への負担が伴います。健康な歯を抜くことは、身体にとってストレスとなり、抜歯後は一定の制約があります。例えば、強いうがいを避ける、激しい運動を控える、長風呂を避ける、飲酒をしないなど、抜歯後のケアに注意が必要です。また、抜歯の際には骨や神経を傷つけるリスクも伴うため、処置には慎重さが求められます。
非抜歯矯正での治療方法
アンカースクリューを用いて奥歯を移動させる
歯科矯正用アンカースクリューを用いて奥歯をさらに奥に移動し、前歯のスペースを作る方法です。ただし、親知らずは通常抜歯されることが多いです。
歯列の幅を広げる
歯が生えている歯槽骨の範囲内で歯列のアーチを広げることでスペースを確保します。アーチを広げる範囲は限られているため、適応には個人差があります。
歯を少し削り、広げる範囲を設ける
エナメル質を少し削ることで、歯と歯の間にわずかなスペースを作り出す方法です。削る量はごく少量で、通常は1本あたり0.25mm程度です。
痛みに配慮した抜歯
矯正治療に伴う抜歯では、痛みに配慮して局所麻酔を行います。麻酔によって痛みをほとんど感じることなく抜歯ができ、注射時の痛みも表面麻酔を使用することで緩和できます。また、抜歯の対象となるのは小臼歯(前から4~5番目の小さな歯)であることが多く、抜歯しやすいため、処置にかかる時間も短くなります。
精密な診断と患者様の
意思によって抜歯・
非抜歯を検討します
矯正治療では、必ずしも抜歯が必要とは限りません。抜歯を行うことで理想的な歯並びや口元に近づくことができる場合がありますが、抜歯しないことのメリットも考慮しなければなりません。当院では、患者様の治療のゴールやご希望を伺い、リスクやメリットを十分に説明した上で、抜歯の必要性を検討します。
抜歯をした場合 | 抜歯をしなかった場合 |
理想的な歯並びに近づきやすい | 歯を抜く不安がない |
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出っ歯の改善により唇を閉じやすくなる | 痛みや腫れがない |
横顔の美しさが際立つ可能性が高い | 健康な歯を残せる |
上下のかみ合わせが改善しやすい | 抜歯による隙間が発生しない |